2015.01.13


【インタビュー】
労働条件改善、国も支援 参入審査強化に意欲

国土交通省自動車局貨物課 秡川 直也 課長

平成24年末の政権交代以来、経営環境が激変したトラック業界。国の景気刺激策で景況が改善し、荷動きも回復しつつある。一方、業界では燃料価格が高止まりする中、ドライバー不足が直撃するなど課題は山積したままだ。国土交通省自動車局の秡川直也貨物課長は「賃金や労働時間の問題を解消しなければ人は集まらない」とし、荷主の理解を深める取り組みが必要と語る。

――昨年の業界の経営環境をどう見る。
秡川 荷量は地域や業種ごとにバラつきがあるが、総じて悪くないのではないか。ただ荷動きが戻りつつある半面、人や車両不足で各社が苦労している。行政としても多くの情報を発信し、少しでも業界の改善につながる取り組みを進めたい。
――昨秋から原油価格の下落が続いている。
秡川 燃料価格の下落につながる流れはありがたいが、機関投資家の動きによっては再び原油価格が反発する可能性もある。相場が下落しているいまこそ、トラック事業者には再上昇を想定した準備を進めてほしい。
――準備とは。
秡川 燃料サーチャージ導入には、事前に基本運賃を決めておく必要がある。燃料高騰分を転嫁するには運賃そのものを上げる方法もある。国交省も補正予算を活用した対策、荷主企業への制度の説明など、引き続きできる支援を進めていく。

各社自助努力だけでは無理

――深刻化するドライバー不足の対応も急務。
秡川 トラックは他産業に比べ賃金、労働時間といった条件が悪い。運賃をしっかり収受して給料を支払ったり、荷待ちの問題を解消したりしなければ、いくらキャンペーンを張ってイメージを良くしても人は来ない。
――賃金や労働条件改善を各社の「自助努力」だけに任せていいのか。
秡川 荷主との関係があり、事業者の自助努力だけで問題を解消するのは難しい。事業者の労働時間違反の中には顧客のオーダーが影響したケースも。荷主の問題認識を深めるため、国として何ができるか考えたい。
――適正取引の推進で柱となる契約書面化の進ちょくは。
秡川 昨秋からトラック協会などと調査を進めている。早期に結果をまとめ実態把握に努める。
――ト協加盟事業者と非加盟事業者の間で、書面化の認知度に差があるとの運輸局の調査結果もある。
秡川 国交省も広報に工夫しているが、一般の人が制度改正などを全て理解しているわけではない。運輸局の説明会もト協と連携することが多く、これらによって差が出ているのではないか。
――対策はあるのか。
秡川 対策はすぐに思い浮かばない。課題として頭に置いておきたい。

適正化機関の活用促進

――おととし強化した参入規制の効果は。
秡川 平成25年5月に法令試験を強化した後の合格率は約7割。試験を受け続ければ必ず合格していた状況から変わっている。トラック運送業を始める以上、経営者は必要な法令知識を身に付けなければならない。
――業界からはさらなる強化を求める声が。
秡川 今夏をめどに参入手続きの厳格化を実現する。いまは運輸業の開始届け出から6カ月以内に適正化事業実施期間の指導員が巡回指導を行っているが、もっと早い段階で入ることも考える。軽い違反でも見つかれば、行政に速報する制度がつくれないかも検討する。
――指導員の数に限界があるのでは。
秡川 適正化事業実施機関が全て確認するのは難しい。書面審査時に社会保険加入を証明する証書の添付を義務付けるなど、工夫できる部分もあるはずだ。制度の実効性を高める方策を業界関係者と考えていきたい。

記者席 役人らしさ「いまこそ」

近年の貨物課長の中では最も「役人らしい」課長かもしれない。物事の考え方は実に合理的。質問をしても必要なこと以外は決して漏らさない。記者からすれば、これほど頭の痛い存在はいない。
が、1度仕事を離れると全くの別人。お堅いイメージが強い役人とは思えないほど、気さくに話す。「初めは『昭和の役人』という印象だったが、実は全く違った」とあるトラック企業トップ。他にも「変に肩肘張らず話ができるのがいい」といった声も聞かれる。
航空局時代は空港改革などの難題もクリアしてきた。貨物課は「予算額も含め航空とは違う。目の前の問題を1つ1つ処理するしかない」とするが、業界が望むのはまさにそれ。燃料高騰、人材不足など山積する問題を着実に解決する〝役人らしさ〟が求められている。

(経歴)
秡川 直也氏(はらいかわ・なおや) 昭和40年3月4日生まれ、49歳。神奈川県出身。63年東大法卒、運輸省(現・国土交通省)入省、平成23年航空局航空戦略課長、24年大臣官房参事官航空局担当などを経て、26年4月自動車局貨物課長。(小林 孝博)

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