2021.01.19


【社長インタビュー】
逆境こそ企業力の見せ時 新中計は必達の覚悟で

川崎近海汽船 久下 豊 社長

 新型コロナウイルスの感染症で、経済や働き方が大きく変化しつつあった昨年6月、川崎近海汽船(本社・東京)は久下豊社長が就任した。久下社長は、「逆境だが企業としての底力を見せる良いチャンスだ」と前を向く。今後企業のデジタルトランスフォーメーション(DX)を進め、力強い内部体制を構築するとともに、ニーズを敏感に捉えながら営業力を磨いていく方針だ。

 ―就任の心境は。
 久下 厳しい時期というのが率直な感想だ。だが当社は近海、内航RORO、フェリー、不定期船、オフショア支援船などさまざまな間口があり、それぞれにプロがいる。社員のモチベーションも高く、逆境でも力を発揮してくれると強く感じる。
 ―感染症の拡大による影響で足元は苦しい。
 久下 2020年4~6月期が落ち込んだ。だが9月までの上期全体で見れば、フェリー事業での旅客の回復や内航RORO船での個人向け貨物取り込みで営業利益2億3500万円の黒字で着地できた。
 ―コストカットにも取り組んだ。
 久下 燃料費をはじめとした運航費の低減に努めた。加えて7月以降、荷動きが回復傾向。牛乳や冷凍食品など、生活に密着した貨物が底堅く動いた。旅客も10月には例年の7割程度に回復した。

清水―大分で利便性を向上

 ―定期船では、清水(静岡県)―大分航路にも追い風が吹き始めた。
 久下 熊本と大分を結ぶ道路の新トンネル開通で、利便性が向上した。新たに、12フィートの小口コンテナを利用した輸送への対応にも取り組んでいる。ダイヤも見直し、12月から大分港の出航時間を30分早めた。
 ―利用者のニーズに耳を傾けた。
 久下 まだやれることは多い。例えば船内の通信環境を整備し、有人トラックの乗船増に取り組みたい。また、シャーシ、コンテナ、単車と取り込める貨物のバリエーションを増やして利用拡大につなげたい。

21年6月べにりあを代替え

 ―新造船「べにりあ」を苫小牧(北海道)―八戸(青森県)航路に投入する。
 久下 本船に設定のなかった特等室、一等ペット同伴室の新設やトラックドライバー室の完全個室化など、時代に合わせた客室とした。冷凍食品をはじめ食料品が多いダイヤ特性を踏まえ、電源設備増設など貨物ニーズにも対応する。
 ―フェリーでは、室蘭(北海道)―宮古(岩手)航路が休止中だ。
 久下 本州側の宮古―仙台を結ぶ道路の整備が遅れていること、開通したとしても休憩施設が不十分なことや、片側1車線であることなどトラックドライバー目線で見ると不便なことが多い。改善を地元の協議会の中で訴えていきたい。
 ―22年度までの中期経営計画を策定した。
 久下 23年3月期売上高388億円、営業利益6億円の目標を掲げた。手堅過ぎると見えるかもしれないが、これを確実に上回ることを目指す。世の中の動きを敏感に捉えつつ、営業力強化とコストの合理化で上積みを実現させていきたい。
 ―DXにも積極的。
 久下 データとIT技術の活用を通じ、新しい顧客サービス、本船運航の合理化につなげていきたい。例えばフェリーの支払い方法の簡素化や、安全かつ効率的な運航をさらに深めるなどさまざまなアイデアを出していきたい。
 ―環境対応も進める。
 久下 二酸化炭素排出減にしっかり取り組みつつ、電気推進船や水素燃料活用など新技術の先取りにも努める。人事では、働きがいの促進と安心して働ける職場をバランスよく両立させるよう新制度を考えている。

記者席 アンテナを高く掲げ

 趣味を聞くと、「ゴルフに鉄道、絵画、それに読書」と多彩な回答。根底にあるのは、〝知りたい〟という根源的な欲求に見えた。例えば鉄道では、普通の旅客線だけでなく、貨物線ツアーや廃線跡も巡る。読書も古典から、イスラエルの歴史学者ユバル・ノア・ハラリまで幅広い。
 就任後、社長室に大型モニターを導入した。「DXと社内に言うからには、具体的に行動で見せたい」という思いからだ。モニターでは、運航船の状況や、株価、ニュースなどがリアルタイムに映し出されている。
 困難な時期のかじ取りには、情報収集に加え実行力が欠かせない。現場を回る中で「さまざまなアイデアを持つ社員が多いのに頼もしさを覚えた」。まず示すの精神で、まだ見えない〝コロナ後〟を乗り切る。

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