2020.03.24


【トラック特集インタビュー】
これからは「実行」の時代 適正取引 さらに推進を

国土交通省 一見 勝之 自動車局長

 トラック業界が転換期を迎えている。貨物自動車運送事業法の改正により、荷主との適正取引、長時間労働是正を進めることができる土壌が出来上がりつつある。一見勝之自動車局長は「これからは実行の時代。業界をより良い方向に変えるためにも、運送各社にアクションを起こしてもらうと同時に、国土交通省も全力を挙げて協力していく」と話す。

 ――トラック業界の現状はどうか。
 一見 直近では新型コロナウイルスの影響を注視しなければいけない。恒常的な課題としては、ドライバー不足が特に大きなものだ。近年、ドライバーの有効求人倍率は過去最大の約3倍になるなど、担い手不足が深刻化している。2024年4月には時間外労働の上限規制も適用され、早急に長時間労働を是正し、働き方改革を実現しなければならない。

関係者一体で物流網を改善

 ――08年から約1年間、貨物課長を務めた。
 一見 10年前と比較すると、取引適正化の環境は改善に向けて変わりつつある。かつては、運送会社が荷主と交渉することさえ困難だった。昨年秋までは、人手不足を背景に少しずつ運賃が上がっていたと聞く。荷主を所管する経済産業省、農林水産省の認識も変化している。
 ――だが、まだ十分ではない。
 一見 中小の運送会社をはじめ、取引適正化の浸透は道半ばと言える。まだまだ新型コロナウイルスの影響により、今後の荷動き、取引がどうなるかを注視することも重要だ。運送会社だけで解決できない課題も多く、発・着荷主、消費者などの関係者と一体となり、物流網全体を改善していきたい。

改正事業法は画期的な法律

 ――おととし12月、議員立法で改正貨物自動車運送事業法が成立した。
 一見 改正事業法は規制の適正化、荷主対策の深度化、標準的な運賃の告示を柱とする非常に画期的な法律だ。例えば荷主対策では、荷主を所管する経産省、農水省も働きかけに協力することが盛り込まれている。業界をより良くする上で有効な法律であり、10年前の貨物課長の時代を振り返ると隔世の感がある。
 ――荷主対策では実行力を期待する声が強い。
 一見 目に見える形で適正化が図られることが重要であり、国交省としても効果が出るよう働きかけていく。既に幾つかの事案で調査・働き掛けを行っているが、蓄積された事例を踏まえ、いずれにしても法律の趣旨に沿う形でアクションに移していきたい。

全産業平均の人件費を使用

 ――2月26日、標準的な運賃の告示案を運輸審議会に諮問した。
 一見 スケジュールは運輸審議会での審議次第だが、最短でも2カ月はかかるといわれている。この運賃などは労働力不足を解消できる賃金を確保するという観点から、各地域で全産業平均の人件費を使用したことがポイントの1つ。トラックの人件費は全産業平均と比較すると1~2割低い。実勢の人件費を前提に設定しても賃金の改善は期待できない。また燃料費、車両費など地域別で費用が異なることも考慮し、より実態に近い運賃を算出している。

物流機能維持が何より大切

 ――この数年、業界でも適正運賃・料金収受に取り組んでいる。
 一見 昨年秋ごろまでは労働力不足を背景に運賃の上昇は続いてきた。日本貨物運送協同組合連合会の求荷求車情報ネットワーク(WebKIT)を見ると、19年度(今年1月まで)の成約運賃指数は17年度比で約8%増加。運送各社へのヒアリングでも2~3年間で、肌感覚で7%ほど上がったとの話を聞く。
 ――さらなる運賃の改善が必要と。
 一見 標準的な運賃を出した立場からすると、働き方改革の推進には、これまでの運賃上昇だけでは十分でないと考えている。今後の景気の悪化による運賃低下圧力にも備える必要がある。重要なのは経済に支障を来さないよう、物流機能を維持すること。ドライバーの確保、労働条件改善を進めるには、標準的な運賃の水準を収受しなければ難しい。
 ――運送各社には、どのように標準的な運賃を活用してほしいか。
 一見 標準的な運賃は目標値であり、かつての認可運賃とは異なることから、まずは各社の判断で荷主交渉に使ってもらうことが重要になる。告示にあわせて、通達で運賃設定の一定の考え方も示していく。自社の業務内容に合わせながら、適正な運賃を収受し、労働条件改善と物流機能を維持するため、役立ててほしい。

問題起きても国が全力支援

 ――ところで、一見局長は業界団体の会合などで「変化」という言葉をよく使う。どんな意味が込められているのか。
 一見 時代ごとに「どういうものが適正か」は変わっても、適正な取引の必要性自体はどの時代も変わらない。一歩一歩、歩むことが重要で、これを変化と呼んでいる。取引適正化に向けては、昨年は全国10ブロックで荷主も参加するセミナーを開催した。業界を含め、活発に啓発活動が行われていることも変化の一つだろう。
 ――業界にとってより良い流れができている。
 一見 取引適正化を進めやすい土壌は出来上がり、これからは「実行」の時代。より良い方向に変えていくことが可能であり、また、変えていかなければならない。その材料の1つが標準的な運賃。運送会社は荷主とよく話し合い、適正な取引を進めてもらいたい。国交省も関係省庁と連携しながら適切に判断し、取引適正化に向けて全力で支援していく。
 ――トラック業界にメッセージを。
 一見 新型コロナウイルスの問題には国を挙げて対応しなければならない。サプライチェーンにも影響が出ており、今後物流でもさまざまなことが起こる可能性がある。国交省としても、業界の状況を把握するとともに、運送各社の声に耳を傾け、できることを最大限行っていく。

記者席 苦しさ、知るからこそ

 入省以来、物流に携わる部署を数多く経験。「物流はダイナミックな仕事。行政手法の面からも面白い」とする半面、思うように業界が良い方向に向かわず、やきもきしたともいう。
 特に実感したのは、燃料高騰がトラック業界を襲った貨物課長時代。荷主との交渉が難しく、苦しむ運送会社を目にしてきた。だからこそ、取引適正化の土壌が出来上がりつつあるいまを好機とし、業界にも変化することを求め続ける。
 実は今回の取材、新型コロナウイルスの対応でスケジュール調整が難しかった。ようやく日程を確保した当日も緊急の要件が入り、中止も覚悟した。それでも合間を縫って応じてくれたのは、物流機能の維持にはできることを最大限するという気持ち。トラック業界に懸ける思いは人一倍強い。

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